このBLOGでも江戸時代の算術や和算について何度かご紹介していますが,今回は和算に関する書籍を1冊取り上げたいと思います。ちなみに上の写真は関孝和です。
和算について,いろいろな書籍が出回っており,すべてを比較したわけではありませんが,今回のオススメ書籍は,
1.内容が専門的過ぎない
2.広すぎず浅すぎず,丁度よいボリューム
3.小中学生でも理解できて分かりやすい
これらをすべて満たしている良書だと思います。この1冊で和算については,ほどよくお腹いっぱいになるでしょう(^^)
これまで色々と気まぐれで本を紹介してきましたが,いつも以上に今回は,とっておきを本棚から取り出した次第です(^^)
なぜ江戸で和算が爆発的にヒットしたのか!?
和算が江戸で流行して庶民の娯楽の1つになっていたことについては,何度かこのBLOGでもご紹介させていただいた通りです。江戸の教育で読み・書き・そろばんといわれるように,商人や庶民が生活する上で算術が発達した一面もありますが,興味深いのがやはり算額の風習です。
江戸時代では,各地で数学の問題を書いた絵馬を神社などで奉納しておりました。その誰かが作った問題を誰かが解き,難しい問題になると町の話題になり,熱狂し,人々の和算の能力が高くなっていく好循環が生まれたのです。剣術や茶道などと同じで,各地の知識人のまわりには流派も生まれていきます。
このBLOGでも紹介した天地明察でも登場していますが,書物や算額には解答をあえて示さない遺題というものも登場しました。要するに,難問は自分でじっくり考えるために答えを伏せているのです。その遺題を解けた人は次の遺題をどんどん追加していき,リレー形式で盛り上がったのです(遺題継承という)。
当然,インターネットが無い時代に,人々は神聖な神社で数学を楽しんだのです。素晴らしい文化ですね(^^♪
あえて云うと「中学への算数」の読者におすすめ!
和算について前置きが長くなりすぎましたね。。。
さて,この書籍では,塵劫記や算額の問題など,江戸の算術について,ほぼすべて網羅しているとお考え下さい。これ以上でもこれ以下でもないと思います。
解説もすごく分かりやすいですが,しっかり読むには,ある一定の数学(算数)の知識が必要で,すべての小学生が理解できるとは思いません。大人でも苦戦するレベルの問題や解法が登場します。
目安として,例えば「中学への算数」の解説が理解できる小学生であれば,ある程度は理解して読めるとは思います。中学受験でいうところの対象学年は6年生でしょう。意識の高いお子様は,もう少し早い時期から手に取っておいてもよいかもしれません。
個人的な考えですが,本棚にはすぐ読む本ばかりを並べるのではなく,将来的に読んで欲しい本を並べる環境づくりが大事だと思います。絵や写真なども多いので,興味が湧いたチャプターから読むとよいでしょう。
公式を歌にする!江戸時代の人から学ぶ暗記術!?
あまりネタバレになってはいけないのですが,もう少しだけ語らせて下さい。
俳句や短歌が発達したように,日本人は言葉の韻を大事にし,また,言葉で遊ぶのがとても上手でした。世代を問わずに,何でも語呂合わせにしたりするのも日本人ならではでしょう。驚くことに算術でも,解法や公式を歌にして楽しんでいたようです。
かたせばは ひろせばよこを 合わせおき
たてかけニわり 歩数とぞしる
台形のことを片狭(かたせば)といいます。台形の面積の公式(上底+下底)×高さ÷2を歌にしたものです。しっかり五七五七七になっており,リズムが美しいですね(^^♪
現代の勉強でも通じることですが,暗記方法に正解などなく,時には自分で歌や語呂合わせを作って勉強を楽しんでみてはいかがでしょうか?