江戸の理系力03

 
今回ご紹介させていただく書籍は,ある程度の歴史の知識がないと面白く無いかもしれません。大人向け(中高生以上)のものです。タイトル通りで,江戸時代の科学技術について,詳しく書かれた歴史本です。良い書籍に出会いました(^^♪
 

歴史好き,もしくは科学好きは買っておいて損はないでしょう。

とにかくボリュームのある内容です。目次の順で簡単にご紹介させていただきます。
 
第1章「江戸の天文暦学」
 
このBLOGでもご紹介させていただきましたが,小説「天地明察」につながる話です。改暦に挑んだ渋川春海(安井算哲)について解説されています。天地明察を読了した人はとりあえず,この本を読んでおいたほうがいいでしょう。さらに興味や知識が深まります。
 
(関連BLOG記事)解説あり!小説の中で関孝和が一瞥即解した算額の問題「天地明察」冲方丁
 
 
第2章「江戸の測量技術」
 
実測での日本地図を完成させた伊能忠敬や,北海道や樺太の探検家間宮林蔵のお話。この本全体に言えることですが,江戸時代以降との比較や海外との比較が丁寧に示されています。
 
 
第3章「江戸の医学」
 
蘭方医学や解体新書や,世界初の全身麻酔を成功させた華岡青洲(乳がんの摘出)の話など,なかなか読み応えのある章です。
 
現代の医者が幕末にタイムスリップするストーリーで有名なマンガ「JIN―仁」をご存じでしょうか?ドラマ化もされていましたね。仁を読まれた方にもそのままこの書籍をおすすめできます。
 
また,このBLOGでご紹介させていただいた「医学の歴史」とも関係します。
 
(関連BLOG記事)医師を目指すお子様が小6までにぜひ読んで欲しい!「まんが医学の歴史」茨木保
 
 
第4章「江戸の数学・和算」
 
来ました~!!
とにかく,江戸では庶民レベルで算術・和算が流行した背景が詳しく分かります。実はこの章から先に読みました(^_^;)
 
江戸の理系力02
江戸では算数は娯楽の1つだったのです!小学生のみなさまが学習している,つるかめ算,魔法陣,円の求積(円周率),継子立て,…など,すべてこの時代からスタートしました。算術や算額については,いずれこのBLOGでも詳しく扱いたいですね。数冊,紹介予定の図書が待機しております。
 
(関連BLOG記事)インベスターZをご存知ですか?今週は塵劫記の油分け算も登場!
 
チャートのろうそく足の誕生や江戸の為替事情のコラムもあります。とにかくボリュームのある本です。
 
 
第5章「江戸を彩る理系人たち」
 
平賀源内や佐久間象山や,からくり人形(茶運び人形)をつくった細川半蔵のお話など。
 
からくり人形
こういう若干の遊び心のある発明も,天下安泰の江戸時代ならではですね(^^)
 

とにかく冒頭の対談コーナーがアツイ!

この本の冒頭では,科学技術史の第一人者である鈴木一義さんと「天地明察」の著者の冲方丁さんの対談が載っており,すごく読み応えがありました。鈴木さんがとても素晴らしいお言葉を述べられていたので最後に載せておきます。

紫式部が『源氏物語』の中で大和魂という言葉を使っています。これは「漢才」つまり中国などの文化・技術との対比として生まれた言葉です。漢才と大和魂の両立という意味で「和魂漢才」という言葉がありました。明治維新以降「和魂洋才」が叫ばれましたが,今の時代は「和魂和才」があるべき形だという気がします。

クールジャパン戦略という言葉が広く使われていますが,世界では日本の高い技術にやはり関心を持っています。先人たちが築き上げた(残した)知識や技能は宝物です。それらを学び,誇りを持ち,大小問わず新たなチャレンジをしていくことが大事だと思います。