さて,遂にこれをご紹介するときがやってきました!言わずと知れた算法(算術)を題材にした時代小説です。
これまでにBLOG記事では,算術に関しての書籍をいくつかご紹介させていただきましたが,この算法少女は,
1.比較的短期間で読める
2.ストーリー展開がシンプルで万遍なく面白い
3.数学や算数の知識が無くても読める
以上の3点で,多くの方におすすめできます。小学校の高学年から読めると思います(児童文学です)。
算法少女のおおまかな内容
実は,算法少女は江戸時代に実在した算術書です。当時ではすごく珍しく著者が女性の書物でした。どんなことが書かれているかは近代デジタルライブラリーをのぞいてみましょう!
今回ご紹介させていただく方の「算法少女」は昭和48年に発表された遠藤寛子さんによる小説です。算術が得意な主人公の少女あきの身に色々な出来事がおこり,ネタバレですが最後には「算法少女」の出版を手掛けるお話です。
理系の人や数学が得意な人向けの小説と思われがちですが,そんなことは全くありません。むしろ,問題や解法などの詳しいことは小説にはあまり登場していません(作者が数学の専門家でないためでもある)。
どちらかと言うと,江戸を舞台にしたミステリー小説のような側面が強いでしょう。少女あきの身の周りに様々な出来事が起こり,最後にいくつか登場した謎を回収していくようなストーリー展開です。よい例えでないかもしれませんが,半沢直樹のような急展開が人気の1つではないでしょうか。
また,医師(主人公の父),俳人,大名,算法家,武家の娘,浪人,町人など,様々な身分の登場人物が当時の江戸時代の事情を詳しく映しだしてくれます。もちろん,物語の軸は算法です。
あきは算術の優れたとても優秀で天才少女ですが,普段はどこにでもいる普通の女の子なのです。こういったあきの葛藤,心情の変化も読み応えがあります。
舞台は江戸時代。日本での算術ブームのようなものについてはこのBLOGでもご紹介させていただきました。
「ススメ!算法少年少女」和算に関する決定版といえるでしょう!
ある程度,学問として発展すると,算法にも関流や最上流など,流派(いまでいう派閥)ができ,とても残念ですが流派どうしで争い,全体の発展よりも他の流派を批判する兆候がありました。無意味な争いに力を入れる大人たちに,幼いながらも少女あきが強い意志を持って算法に取り組むのです!
算法は航海や天文学,経済やその他の科学にも精通するものです。渋川春海もですが,こういった信念を持った先人が世の発展に大きく貢献したのです!
少女あきが通りがかりの武士を論破した問題
物語の冒頭で,あきの活躍が街中で広まるエピソードがあります。算額の問題を解いて威張っている水野三之介という武士(○○先生の弟子だと威張っているタイプ)の間違いをあきが指摘します。要するに,あきが大人の算法家に完全勝利します。
「今、半円ノ内ニ、図ノ如キ勾股形(直角三角形)と二円アリ……」から続く問題です。ざっくりと現代訳すると次の通りです。
半円の中に直角二等辺三角形と小円が接している図形について,2つの小円は合同であるとき,半円の直径と小円の直径の長さの比を求めなさい。ただし,直角三角形の外側の小円は最大のものとします。
答えは13:4です。BLOGで紹介するために,算数の範囲内(できるだけシンプル)に解ける解法を再考してみましたが,どうやら見当たりません。。。申し訳ありません。
中学受験の算数の解法というよりも,これは中高数学の範囲で解けます。しっかり数学を学習した高校生(中学であれば3年生ぐらい)であれば,それほど難しくはありません。
解説はこのBLOGでご紹介しませんが,ネットで色々アップされているので参考にして下さい。
(参考LINK)算法少女の幾何学問題 別解
(参考LINK)ジュニア歴史小説-算法少女
中学入試レベルっぽくアレンジした問題をどうぞ!
それにしても算額の問題は何かと内接円や外接円が登場しますね(^_^;)
そこで,このBLOGをご覧の中学入試の受験生のために,1問ご用意しました。あきが勝利した算額の問題のアレンジです。
WEB問題集の図形ドリルで以前から公開している問題です。
13才の少女あきに負けじと,受験生の皆さまも受験算数に励んで下さい(^^)